採用基準の設定方法について。見直すポイントや注意点を解説

採用基準の
設定方法について採用基準を見直す
ポイントや注意点を解説

採用基準の設定方法について。見直すポイントや注意点を解説

2022.01.28(最終更新日:2024.11.05)

中途採用のキホン

採用基準とは、自社で活躍する人材を採用するために、面接官によって選考に個人差が出ないよう作成する、採用における指標のことです。
採用基準は、公平性の担保だけでなく、採用後のミスマッチを防ぐ上でも重要です。もし、採用活動がうまくいっていない場合は、採用基準に問題がないか見直してみることで解決できるかもしれません。
そこで、問題のある採用基準や見直すポイント、採用成功につながる採用基準の設定方法について解説します。

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採用基準の重要性とは

採用基準は、自社への定着度や活躍度の高い人材を見極め、面接官によって選考に個人差が出ないよう採用におけるものさしを作るために必要です。採用基準を作ることで公平性が担保され、面接官による主観的な判断を防ぐことにより、結果判断に要していた時間も短縮することができます。また、入社後の定着率が高まることで、採用後のミスマッチを防止することにもつながります。

こんなときは
採用基準の見直しを

採用基準に問題があると、次のようなことが起こります。

  • 人事は採用したいと思った応募者でも、現場担当者との面接で不採用になってしまった
  • 書類選考の通過率が悪い
  • 早期退職など、採用後のミスマッチが起きている

もちろん、このような状況を招いた理由は一つではないでしょうが、該当する項目がある場合、採用基準に問題がないか一度見直してみましょう。

問題のある採用基準とは

問題点1:明確な採用基準がなく、評価があいまい

明確な採用基準がないまま選考を進めると、面接官によって選考結果に個人差が出てしまいます。

本当は自社で活躍できる人材が不採用になってしまったり、企業と応募者の間でミスマッチが起こり入社承諾前辞退や入社後の早期退職につながったりと、さまざまな問題が起こる要因になります。

問題点2:転職市場を考慮せず、採用基準が高くなっている

有効求人倍率の高まりもあり、採用が難しくなっています。そのため、採用基準を高く設定している意識はなくても、転職市場の相場と照らし合わせたときに採用基準を満たす人材の絶対数が少なくなっている可能性があります。

また、本当は自社で活躍できるポテンシャルを持った人材が、採用基準が高くなっていることで不採用となり、競合他社に人材が流出してしまう原因にもつながります。

採用基準を見直す
3つのポイント

ポイント1:募集背景から見直してみる

そもそも、現場ではどんな課題があり、なぜ採用したかったのか? 募集背景までさかのぼってみると採用基準が適切かどうか見えてくることがあります。

ある企業の例

営業職の採用基準

  • 目的達成志向が強く、分析能力にたけ、戦略的に実行できる営業経験者

現場の募集背景

  • 高い業績を上げていたAさんが退職するため、後任を採用したい

上記例では、欠員補充のために、Aさんのような人を「求める人物像」として挙げていたことになります。

現場の求める人物像がそのまま採用基準になっていると、すべての能力を満たす人材は絶対数が少なくなり、採用難易度も上がります。現場がまず解決したいことは「営業機能を維持すること」であり、そのための採用基準を「目的達成志向が強い」部分だけに絞り、高業績につながる「分析能力」や「戦略的実行力」は、業務経験の中で鍛錬していくという考え方もできます。

募集背景までさかのぼり、採用基準が適切かどうか見直すことも重要なポイントです。

ポイント2:転職市場の相場と照らし合わせる

転職市場の動向を知り、競合他社の動きを調査・分析してみることも大切です。転職市場の動向は、厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況」や民間の調査研究機関が発表している採用市場レポートなどで確認できます。有効求人倍率が高い場合や求人件数が多い職種は獲得競争が激しく、採用が難しくなる傾向にあります。自社の採用基準が高く設定されている場合は、適正な基準に変えるなどの見直しが必要です。

市況感に合った採用基準を設定することで、選考における母集団を適切に絞り込むことができ、本当は自社で活躍できるポテンシャルを持った人材が、不採用となってしまう事態を防ぐことができます。

ポイント3:自社独自の採用基準を作る

採用基準は定量・定性の両面から考える必要があります。「業績」や「成績」などの定量面は数字で表しやすく判断するのも容易ですが、「能力」や「価値観」などの目に見えない定性面を軽視すると、「社風が合わない」「現場社員となじめない」など定着率が低下する要因になり、採用後のミスマッチにつながってしまいます。

とはいえ、「自社の社風にマッチするか、自社で活躍できるか」といった目に見えない部分は、数値化・マニュアル化されたものではないため、自社独自の評価基準を作ることが重要になってきます。

コンピテンシーモデル
による
採用基準の設定方法

採用基準の設定方法はさまざまですが、自社独自の定性的な指標を作る例として、コンピテンシーモデルによる採用基準の設定方法を紹介します。

コンピテンシーとは

コンピテンシーとは、高い業績や成果を出す人材に共通する思考の傾向や行動特性のことです。表面的な成果そのものを評価するのではなく、成果につながる行動特性を評価するのがコンピテンシーです。

コンピテンシーの概念

コンピテンシーの概念

※画像をタップすると拡大されます。

コンピテンシーの概念

ただし、コンピテンシーは概念的な言葉であり、共通するフォーマットがあるわけではありません。業界や職種、役職、部署によって「成果」の基準が異なる上に、企業風土によっても変わるため、自社に必要なコンピテンシーが他社にも当てはまるわけではないからです。

自社に適したコンピテンシーを見極め、コンピテンシーに基づいた採用基準を作る必要があります。コンピテンシーモデルによる採用基準は、応募者の評価軸が統一されるだけでなく、自社への定着度や活躍度の高い人材を採用できることにもつながります。

3つのステップ

ステップ1:コンピテンシー項目を洗い出す

コンピテンシーに基づいた採用基準を作成するためには、まず目標となるモデルを定義する必要があります。業務遂行能力が高い人物(ハイパフォーマー)の行動を観察し、成果につながる行動を分析します。

ポイントは「思考傾向」を捉えること

高い業績を出すために「行動した内容」を洗い出すのではなく、「なぜそのような行動に至ったか」の思考傾向を捉えることが大切です。例えば、営業の予算目標達成のために、「毎日電話をかけた」という行動を別の社員が行ったとしても、個人の置かれている状況や環境が異なるため同じ成果が出せるとは限りません。

「顧客が何に困っているかを引き出し、顧客理解を深めることで信頼関係を築くことができると思ったから」という行動に至るまでの思考傾向が「行動特性」です。この場合のコンピテンシー項目は、「戦略的思考」や「計画力」などが挙げられます。

自社のコンピテンシー・ディクショナリーをつくる

自社に必要なコンピテンシー項目をすべて洗い出し、体系化したものを「コンピテンシー・ディクショナリー」といいます。

コンピテンシーの研究機関が作成したものや、企業が独自に作成しているものなどがあり、定義や形式に決まりはありません。業種や職種、役職によってコンピテンシーモデルは異なるため、コンピテンシー・ディクショナリーを作成しておくことで、それぞれのモデルのコンピテンシー項目を決める際に辞書のように参照できます。

コンピテンシー・ディクショナリー例

コンピテンシー・ディクショナリー例

※画像をタップすると拡大されます。

コンピテンシー・ディクショナリー例

ステップ2:経営層や配属予定先の部署とすり合わせる

ステップ1で洗い出した項目すべてが組織や部署に必要とは限りません。自社の事業戦略や将来設計と照らし合わせて、必要なコンピテンシーを選定します。選定作業は人事部門だけで行わず、必ず経営層や配属予定先の部署と意見をすり合わせましょう。

【例】営業職に求められるコンピテンシー項目

  • 達成志向
  • 戦略的思考
  • 関係構築
  • ストレス耐性
  • 適応性

ステップ3:コンピテンシー項目を行動レベルに落とし込む

コンピテンシー項目が決まったら、採用基準として具体的な行動に落とし込みます。どのレベルにまで落とし込むかは、企業や採用目的によりさまざまです。ステップ2で例として挙げた「営業職に求められるコンピテンシー項目」を行動レベルに落とし込むと、以下のようになります。(※あくまで一例です。)

達成志向 ・決めたことはあきらめず最後までやり遂げる
・ゴールを追い続ける
戦略的思考 ・現状や課題を論理的に分析できる
・課題に対して解決策を編み出す
関係構築 ・人にポジティブな印象を与える
・人と交流する
ストレス耐性 ・変化を受け入れる
適応性 ・冷静に対処する
・変化に対応する

採用基準が決まったら、面接の場で応募者の成功体験などを聞き、「なぜそのような成果・行動につながったのか」といった質問から思考傾向を捉えます。思考傾向とコンピテンシー項目とを照らし合わせることで、自社に適した人材かどうかを見極められるようになります。

採用基準を
見直す際の注意点

採用基準を見直す場合、法律上、採用基準に含めることが禁止されている事項や配慮が求められる事項があるので留意しておきましょう。

注意点1:採用基準で禁止されている事項を含んでいないか

次の項目は就職差別とみなされるため、原則として採用基準にしてはいけません。

  • 性別
  • 年齢
  • 身長、体重、体力
  • 障害・病気の有無
  • 転居を伴う転勤に応じるか

注意点2:採用基準で配慮を求められる事項を含んでいないか

次の個人情報は収集が原則として認められないので、採用基準に盛り込んではいけないことになっています。

本人に責任のない事項 ・本籍・出身地
・家族
・住宅状況
・生活環境・家庭環境
本来自由であるべき事項 ・宗教
・支持政党
・人生観・生活信条
・尊敬する人物
・思想
・労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動

採用基準の
見直しをして
採用成功につなげよう

採用基準は、選考の公平性・一貫性を担保するために採用におけるものさしとして必要な指標です。面接官による主観的な判断を防ぎ、結果判断の時間が短縮されるだけでなく、より自社に適した人材を採用できるようになります。採用基準を設定する際は、「業績」や「成果」などの定量面だけではなく、「能力や素質」「価値観」といった定性面も重視して作りましょう。

とはいえ、「求める人物像」に理想を求めるあまり、必要以上に採用基準が高くなると、選考における母集団の絶対数が少なくなり、本当に活躍できる人材を不採用にしてしまうことにもつながりかねません。

現在の採用基準が適切かどうかは、募集背景までさかのぼって確認したり、転職市場の動向をみたりして日々リサーチ・分析していくことが重要です。

自社独自の採用基準を作成して、採用成功につなげましょう!

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