下げるには採用のミスマッチを
減らすポイント
2021.12.23(最終更新日:2024.11.05)
中途採用のキホン
採用難といわれる昨今、中途採用した社員の早期離職を減らし、定着率を高めることが人事課題の一つになっています。早期離職は企業にとって採用コストが膨らむだけでなく、転職希望者にとっても転職は大きな決断となるため決して望ましいことではありません。
中途採用者の離職率を下げるために 気をつけるポイントについて解説します。
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早期離職を防ぐことの重要性
「中途採用者の離職率を下げたい」といった声が近年よく聞かれます。中小企業庁の調査によると、中小企業での採用後3年間の離職率は、中途採用では約3割、新卒採用では4割を超えているという結果があります。
早期離職は採用や教育にかかるコストが増える要因となるだけではありません。転職希望者にとって、転職は大きな決断です。早期離職に伴う金銭的な負担はもちろん、転職活動の再開は精神的・肉体的な負担も大きくなります。
在職中は企業と従業員という関係性であったとしても、離職後は自社の取引先やサービス利用者になる可能性もあります。早期離職にはやむを得ない事情もありますが、ネガティブな理由による離職を防ぐことは、自社のファンを作る「企業ブランディング」の活動につながります。そのためには、双方が相互理解を深め、信頼関係を築いていくことが大切です。
早期離職が起きる原因
早期離職が起きる原因はさまざまですが、大きな理由として、「入社後のギャップ」と「社風のミスマッチ」が考えられます。
原因1:入社後のギャップ
入社前に思い描いていたイメージと、入社後の実態が違ったことで早期離職につながってしまうケースです。
給与や待遇などの労働条件面での認識違いで起こるギャップや、仕事が合わないというギャップなどです。後者は「仕事が覚えられない」「要求されている能力・スキルが高い」こともあれば、「もっとできるのに、一部の仕事しか任せてもらえない」といったこともあります。
これらが起こる要因として「募集ポジションに対して採用要件が誤っている可能性」や「面接での情報提供・相互理解が不足していた可能性」が考えられます。
原因2:社風のミスマッチ
社内の人間関係や職場環境といった企業の文化と合わずに早期離職につながってしまうケースです。
上司や部下・同僚との人間関係がうまくいかない、馴染めないといったことが離職の原因になっています。
社風が合うかどうかは、選考の場で確認することが難しく、選考以外での工夫が必要になります。
早期離職を防ぐための
中途採用のポイント
早期離職を減らすために入社前にできることは「採用のミスマッチを減らすこと」です。
前段で、早期離職が起こる原因として「入社後のギャップ」と「社風のミスマッチ」を挙げました。この2点を中途採用のときに起こしにくくすることが対策につながります。
具体的には、以下の3つです。
入社後のギャップを減らす対策
- 対策1:採用要件や採用基準を決める時は、募集背景までさかのぼる
- 対策2:面接の場で適切な情報提供をし、相互理解を深める
社風のミスマッチを減らす対策
- 対策3:選考フローを見直し、面接以外で自社情報を伝える機会を作る
対策1:採用要件や採用基準を決める時は、募集背景までさかのぼる
募集ポジションに対して「採用要件」が誤っていたり、選考のものさしとなる「採用基準」の設定が誤っていたりすると、結果として採用のミスマッチを起こします。
よくあるのは、現場の採用ニーズをそのまま採用要件や採用基準として設定しているケースです。そのような時は、現場ではどんな課題があり、なぜ採用したいのか、といった募集背景までさかのぼってみると採用要件や採用基準が適切かどうか見えてくることがあります。
対策2:面接の場で適切な情報提供をし、相互理解を深める
面接は応募者の適性を見極めると同時に、自社の情報を発信し、応募者の入社意向を高める場でもあります。
具体的な仕事内容や、今何が求められていて何を期待しているのか、競合他社と比較した際の優位性や将来の展望等、求人票に記載されていない生の情報を積極的に提供しましょう。残業時間などマイナスの印象を抱かれてしまう可能性のある情報も包み隠さず開示することが重要です。
質疑応答の時間を十分に取り、応募者の不安解消に努めることで、相互理解が深まり、入社後のギャップを防ぐことにつながります。
対策3:選考フローを見直し、面接以外で自社情報を伝える機会を作る
情報提供の機会を増やすために面接回数を増やすのは適切ではありません。選考が長引いてしまうとスケジュールが合わなくなったり、他社に入社が決まってしまったりと、選考辞退につながりかねないからです。
面接での確認事項を整理して、面接で確認すべきこととそれ以外でも確認できることに分けましょう。面接回数は最低限にとどめ、別途、社員との懇親会や面談、職場見学などの機会を設けると、企業文化や社員の雰囲気が伝わるため、ミスマッチを減らすことができます。
【参考】入社後にできる対策
入社後は、リテンション施策と呼ばれる社員の定着率を高めるための施策が中心になります。
リテンション(retention)には保持・維持といった意味がありますが、もともとはマーケティングの分野で使われている用語で「既存顧客とのつながりを維持し、定着率を上げるための活動」を指します。人事の分野では、社員の定着率を上げるという意味で用いられることが多いです。
代表的なリテンション施策
メンター制度
メンター制度とは先輩社員(メンター)が後輩社員(メンティー)に対して個別に行う支援活動のことです。業務に関する支援にとどまらず、職場での悩みなどの問題解決のサポートも行うのが特徴です。メンターは所属部署の上司ではなく、年齢や社歴が近い年上の先輩社員が担当することが一般的です。ちょっとした問題や疑問でも気軽に相談できる先輩社員がいることで、社内のつながりや精神的な悩みを解消でき、社員の定着につながります。
1on1ミーティング
1on1ミーティングは上司と部下で定期的に行う1対1のフランクな面談です。日々の業務の成果や失敗について話し合います。面談の目的は評価ではなく、部下の成長をサポートすることです。
面談では上司と部下が一緒に業務を振り返り、部下が自ら今後の課題と改善点を見つけられるよう上司は気づきを促します。部下は自分が今いるポジションを見つめ、自分に何が必要かを再認識することで成長でき、社内のコミュニケーションの活性化も期待できます。
OJTとOFFJT
OJTは上司が職場での実務経験を通して部下にスキルやノウハウを身につけさせる教育訓練です。一方、OFFJTは社外指導者や社外研修を通して、対象社員にスキルやノウハウを身につけさせる教育訓練です。OJT、OFFJTを通して素早く業務になじみ、新入社員が本領を発揮しやすくなることが期待できます。
両者はともに一長一短なので、職種や業種、育成方針によって、OJT、OFFJT、または両方を駆使して、業務に対する理解を深めてもらいます。
定着率を高めるオンボーディングプログラム
定着率を高める取り組みとして、「オンボーディング」という言葉があります。オンボーディングは 、新しく入社した社員が職場や仕事に慣れるために、組織として必要なサポートを行い、早期戦力化を目指す仕組みを指します。on-boardは「船や飛行機の上の」という意味で、人事の分野では「会社や団体の一員として」という意味で用いられます。新しく参画した社員に行うトレーニングプロセスという意味で「オンボーディングプログラム 」「オンボーディングプロセス」などと使われることが多いです。
オンボーディングプログラムは、企業が独自に作るものであり、共通の決まったフォーマットがあるわけではありません。新入社員の経歴や所属部署のミッションに応じてプランを作ることが多く、前段で紹介したメンター制度やOJTなども取り入れて、組織として「仕組み化」されるものです。そのため、仕組みを作った後も、社員の早期戦力化につながっているか、現場で意図した運用がされているかの定期的なチェックを行い、見直しや改善をしていくことが重要とされています。
採用のミスマッチ防止と
入社後フォローが鍵
ここまで中途採用者の早期離職を防止する対策について解説してきました。
早期離職の防止は単に採用コストの抑制になるだけでなく、社員の定着率が上がれば、人材育成が進み、経営の中核を担う人材に成長することが期待できます。定着率が高まれば社員の満足度も向上していきます。企業ブランディングという視点でも定着率を高める活動を続けることが結果として社会的な評価にもつながります。そうすると、次の採用活動の際に求める人材が集まりやすくなり、採用活動活性化につながる、好循環が生まれます。
早期離職を防止するには、社員の入社後ではなく、入社前の採用段階から対策を講じることが大切です。中途採用者の早期離職に悩んでいる場合は一度、採用活動の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
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